日本中の読者がもっとも知りたい問い、それは「美内すずえは今、何を描いているのか」に尽きる。結論から言えば、彼女の創作意欲は決して潰えていない。関係者の証言によれば、ストーリーそのものの構成はすでに最終幕まで固まっており、ノートには膨大なネームとプロットが蓄積されているという。
しかし、なぜ原稿が仕上がらないのか。最大の理由は、作中劇である「紅天女」そのものの神聖性と、作者自身の美意識の凄まじいせめぎ合いにある。「紅天女」は単なる演劇作品の枠組み組みを超え、自然への畏敬や魂の半身(魂の片割れ)という根源的なテーマへと昇華された。美内すずえ自身、納得のいかないセリフやコマ割りは一切妥協せず、何百ページ描いた原稿であっても一から破棄して描き直す完璧主義で知られる。結末のビジョンが明確だからこそ、そこへ至る登場人物たちの感情の機微を1ミリも外せないのだ。
現在もアトリエでは作画作業と推敲が続けられており、ファンが危惧するような「執筆放棄」の事実は一切ない。物語は確実に、一歩ずつ終わりへと向かっている。