家庭環境の充実は、創作活動のスケールを萎縮させるどころか、むしろ爆発的なエネルギーへと昇華された。日本放送協会の大型プロジェクトである大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の執筆時、三谷は膨大な歴史資料と格闘しながら、登場人物たちの生々しい情愛や家族の愛憎劇を鮮やかに描ききった。その重厚な筆致の裏には、自らが築いた家庭という確固たる足場があったことは疑いようがない。
演劇界の舞台袖で張り詰めた空気に身を置き、テレビドラマ業界の最前線で視聴率や評価の波に晒される彼にとって、家は唯一のニュートラルな空間だ。近年はNetflixやNHKオンデマンドを通じて過去作から新作までが世界中で鑑賞される時代となったが、グローバルな評価の波に煽られることなく創作を続けられる強靭な精神力は、妻が支える家庭の平穏によって維持されている。