数万人が一斉に帰路に就く退場フェーズにおいて、最短ルートを進むのは最もリスクが高い。人の流れに身を任せて最も近い駅へ向かうと、歩行速度は通常の半分以下に落ち込む。賢い観客が実践しているのは「あえて少し遠い駅まで歩く」という逆転の発想だ。
青山一丁目駅へのアプローチはその代表格である。国立競技場の南側ゲートから神宮外苑の銀杏並木を抜けて青山通り方面へ歩くと、所要時間は約15分。都営大江戸線と東京メトロ銀座線・半蔵門線の3路線が乗り入れるこの駅は、構内が広く複数の改札が存在するため、競技場直近の駅のような身動きの取れない混雑を回避できる。
さらに、試合終了の直前に席を立つ「アーリーエグジット」ができない場合は、スタジアム敷地内や隣接する広場で30分ほど滞在し、ピークを意図的に外す戦略も有効だ。敷地内のデッキスペースで夜風を感じながら余韻に浸り、鉄道各社の入場規制が解除されたタイミングで駅へ向かうほうが、結果的に疲労度を劇的に減らすことができる。