時代が21世紀に入ると、契りの描写はさらなる変容を遂げる。北野武監督が手掛けた『アウトレイジ』シリーズは、盃に象徴される古典的な任侠の価値観が、完全に機能不全に陥った現代のパワーゲームを描き出した。
北野武が提示したのは、もはや仁義の美学すら存在しない、徹底してビジネスライクで冷徹な世界だ。かつて命を賭けて交わされたはずの盃は、単なる組織内の人事異動や保身の道具へと成り下がり、都合が悪くなれば即座に破棄される。儀式に執着する古参のヤクザは嘲笑され、効率と裏切りを厭わない者がのし上がっていく。スクリーンに映し出されたのは、伝統の解体と、むき出しの暴力だけが支配する現代社会の乾いた縮図であった。