しかし、理想を形にする作業は過酷を極めた。アートディレクターの杉森建氏は、コミカルでありながら生物としての実在感を損なわない絶妙なバランスでモンスターを描き続けた。水彩画の柔らかな質感と、ドット絵に落とし込んだ際の明瞭な視認性。杉森氏の卓越した筆致が、架空の生き物に確固たる命を吹き込んでいく。
サウンドとプログラムを一手に引き受けた増田順一氏の苦闘も凄まじい。BGM用のトラック数を極限まで削り、モンスターの鳴き声を周波数変調によって1体ずつ異なる電子音として合成する。資金難でスタッフが次々と離脱し、開発が幾度も暗礁に乗り上げるなか、株式会社ゲームフリークの執念が途絶えることはなかった。6年という異例の歳月を費やして完成したその作品は、従来のロールプレイングゲームが持つ物語主導の枠組みを根底から解体し、プレイヤー自身が冒険の主役となるオープンな体験を提供した。