佐伯のキャリアを語る上で絶対に外せないのが、名優・森繁久彌との濃密なコラボレーションだ。二人の呼吸が生み出した化学反応は、東宝株式会社を代表するドル箱企画となった『駅前シリーズ』で爆発的な成功を収める。
駅前シリーズにおいて、森繁が繰り出す変幻自在のアドリブや人間味あふれる色気を、佐伯は絶妙なカメラワークで受け止めてみせた。伴淳三郎やフランキー堺ら個性派俳優たちが入り乱れるアンサンブルは、緻密な計算と現場の即興性が奇跡的なバランスで融合した結果だ。地方都市の開発や時代の変わり目を舞台に据えながら、人間の普遍的な欲や可笑しみをあぶり出した物語構造は、今観てもまったく古びていない。