『ひぐらし』という作品がホラーサスペンスとして不動の評価を得た背景には、主人公である梨花が幾度となく直面した凄惨な死の描写があります。彼女の死は常に物語のクライマックスであり、惨劇の確定を告げる合図でした。
【原作および各編における主な死亡・自決シーン】
・綿流し編 / 目明し編:園崎詩音による監禁と拷問を回避するため、自ら首に包丁を突き立てて壁に何度も打ち付け、壮絶な自決を遂げる。
・祟殺し編:何者か(山狗)によって古手神社の境内で腹を裂かれ、カラスに内臓を啄まれる猟奇的な状態で発見される。
・暇潰し編:刑事・赤坂衛に助けを求める予言を遺すも、最終的に喉を掻き切られた状態で惨殺される。
・皆殺し編:鷹野三四率いる山狗によって捕らえられ、祭具殿の祭壇の上で意識を保ったまま生きた状態で腹を裂かれる最悪の解体死を迎える。
・業・卒(猫騙し編 / 鉄平・沙都子関連):北条沙都子によって惨劇のトリガーが引かれ、シャンデリア落下での圧死や、沙都子自身の手による解体など、前作を遥かに超える残虐な死を幾度も体験させられる。
精神をすり減らす過酷な死の合間に描かれたのが、ファンの間で伝説となっている「赤ワインシーン」です。幼い児童であるはずの梨花が、夜な夜な高級ヴィンテージワインをグラスに注ぎ、冷ややかな瞳で嗜みながら羽入に悪態をつく光景は、100年の歳月が彼女の純粋な心をどれほど摩耗させてきたかを雄弁に物語っていました。肉体は10歳前後でありながら精神は老獪な賢者であるという、梨花の「歪な生存戦略」を端的に表した象徴的な場面です。