長きにわたり日本各地で機能していた夜這い文化は、明治維新以降の近代化の波によって急速に解体へと向かいました。衰退の要因は主に3つの側面から説明されます。
1つ目は、明治政府による欧米列強を意識した風俗取締です。文明開化を進める政府は、欧米のキリスト教的道徳観に照らし合わせて「野蛮で恥ずべき旧習」と見なした混浴や夜這い、裸体労働などを法令で厳しく禁止しました。警察制度の整備に伴い、違反者は見せしめとして処罰されるようになりました。
2つ目は、1898年(明治31年)の明治民法制定に伴う「家制度」の確立です。婚姻は「当事者同士や共同体の合意」から「戸主(家長)の承諾に基づく家の合体」へと再定義されました。家柄や持参金、純潔性を重んじる価値観が庶民層へ浸透したことで、自由度の高い土着の風習は排除されていきました。
3つ目は、インフラと生活環境の劇的な変化です。大正から昭和初期にかけて農村部まで電灯(白熱電球)が普及し、夜間の暗闇そのものが消失しました。さらに、施錠可能なガラス戸や頑丈な引き戸の普及といった住宅構造の近代化が、夜這いという行為を物理的にも不可能なものへと変貌させました。