チノという少女を深く理解する上で欠かせないのが、ラビットハウスを取り巻く家族のストーリーです。特にファンの間で長く注目を集めてきたのが、チノが幼い頃に亡くなった母親・香風咲(かふう さき)の存在です。
咲はかつてプロのジャズ歌手として活躍し、手品が得意で周囲を笑顔にする明るい女性でした。チノの青みがかった髪や澄んだ瞳は母親譲りであり、チノ自身が大切にしている「歌うことへの想い」や「人を喜ばせたいという願い」の根底には、母への深い憧憬があります。アニメ劇場版や原作の重要なエピソードでも、母の遺した手品用シルクハットや歌がキーアイテムとして描かれ、チノの成長を天国から見守る存在として涙を誘いました。
また、ラビットハウスのマスコットであるティッピーの正体は、チノの祖父である香風提比良(かふう たかひろ)その人です。何らかの理由でアンゴラうさぎの身体に魂が宿ってしまった祖父と、寡黙ながら娘を深く愛する父・タカヒロ。不器用ながらも温かい男手ふたつに育てられたチノにとって、母の面影を感じさせるココアの来訪は、止まっていた家族の時間を再び動かす決定的な出来事となったのです。