歌麿の才能を開花させた立役者として忘れられないのが、江戸メディア界のカリスマプロデューサー・蔦屋重三郎だ。当時の浮世絵出版業は、単に絵を売るだけでなく、どの画家に何を描かせ、いかに話題を作るかというプロデュース能力が勝敗を分けていた。蔦重は歌麿の類稀な人間観察眼を見抜き、彼を専属に近い形で世に送り出した。
二人が組んで放った企画は、ヒットを連発した。流行のファッションに身を包んだ評判の町娘をアイドルに見立ててブロマイド化する手法は、江戸の町で空前のブームを巻き起こした。版元と絵師の強力な信頼関係があったからこそ、歌麿は時代の寵児となり得たのだ。