本作の大きな軸となっているのが、寺島しのぶと夫・久蔵を演じた大西信満(おおにし しま)による壮絶な濡れ場と身体表現です。大西は四肢を失った肉体をリアルに表現するため、長時間の拘束と過酷な身体操作に挑み、台詞が一切ない中で目力と呼吸音だけで兵士の業を演じきりました。
二人が繰り広げる性描写は、一般的な官能美とは対極に位置する、泥臭く痛切な「魂のぶつかり合い」です。食欲と性欲しか残されていない夫に対し、シゲ子は時に拒絶し、時に受け入れ、やがて自らが夫を性的に支配することで立場を逆転させていきます。
「濡れ場を演じることへの躊躇は全くなかった」と後に語った寺島しのぶの言葉通り、女優としての虚栄を完全に捨て去った演技が、閉ざされた日本家屋の中で蠢く男女の生々しい実存を際立たせる結果となりました。