鰹節の最高峰とされる本枯節を作るには、途方もない時間と手間がかかる。生の鰹を卸し、煮熟(しゃじゅく)させ、煙でじっくりと燻し上げる「番熟」の工程を経た後、優良なカビを付けて天日に干す作業を数か月間反復する。このカビ付けによって水分が抜け、魚臭さが消え去ると同時に、脂肪分が分解されて澄み切った上品な旨味へと昇華していく。
職人が手にする削り器から生み出される削り節は、まるで絹織物のように薄く、光を透かす。沸騰直前のお湯に注いだ瞬間に立ち上る香りは、言葉を失うほどの芳醇さだ。濁りのない琥珀色の出汁は、余分な塩分に頼らずとも料理全体の味わいを劇的に引き立てる力を持つ。