ドラマや映画を観た視聴者の多くが強く印象に残るポイントとして挙げるのが、「戌亥が車内で常に駄菓子を食べている理由」です。
この駄菓子を食べる設定は、原作者の真鍋昌平が描く緻密な日常ディテールをベースにしつつ、山口雅俊監督と綾野剛が現場で練り上げた演出でした。命のやり取りや数千万円規模の金が動く苛烈な現場にいながら、数十円のチープな駄菓子を無心で咀嚼する。このアンバランスさが、戌亥という男の「異常なまでの冷静さ」と「世俗から一歩引いた立ち位置」を視覚的に物語っています。
また、駄菓子をシェアしたり、黙々と口に運びながら情報をやり取りする行為は、丑嶋と戌亥の間に余計な社交辞令が存在しない証拠でもあります。
裏社会の本質を突く「戌亥の名言」
戌亥のセリフは常に感情の起伏が少なく、淡々としています。しかし、その言葉には社会の暗部を観察し続けてきた人間ならではの鋭利な真理が含まれています。
「カウカウファイナンスも潮時じゃないのか。……馨、お前は昔から変わらないな」
情報屋としての客観的なリスク警告を発しつつも、最後には幼馴染の「馨(かおる)」としての本質を見守る戌亥。情に流されて破滅していく債務者たちとは対照的に、常に冷静なバウンダリー(境界線)を保ち続ける戌亥の言葉は、シリーズ全体を引き締める重要なアクセントとなっていました。