1964年(昭和39年)にリリースされた『学生時代』は、ペギー葉山にとって『南国土佐を後にして』に並ぶ最大の代表曲であり、日本の音楽史に残るミリオンセラーです。この曲の誕生には、彼女の母校である青山学院と、一人の天才音楽家との深い絆が存在していました。
作詞・作曲を手掛けたのは、当時モダンジャズ界のトッププレイヤーであり、卓越したソングライティング能力を誇っていた平岡精二です。平岡もまた青山学院高等部から青山学院大学へと進んだ同校の卒業生であり、ペギー葉山にとっては学生時代からの直属の先輩にあたる間柄でした。
歌詞に登場する象徴的なフレーズは、いずれも渋谷区渋谷に位置する青山学院の青山キャンパスに実在する風景そのものです。
- 「つたのからまるチャペル」:登録有形文化財にも指定されている歴史的建築「間島記念館」や「ベリーホール(旧神学部校舎)」、そして礼拝堂の厳かな情景。
- 「テニスコート」:高等部・大学の学生たちが放課後に汗を流し、青春を謳歌していたキャンパス内のコート。
- 「讃美歌」:毎朝の礼拝で全校生徒が声を合わせて歌っていたキリスト教主義教育の日常。
平岡精二は、自身が過ごした青学のキャンパスライフの記憶と、同じ空気を吸って育った後輩・ペギー葉山の上品で伸びやかな歌声を重ね合わせ、この楽曲を書き上げました。当時の音楽関係者の証言によると、平岡は「この曲はペギー以外には歌えない」と語り、譜面を手渡したと伝えられています。
発売当時、すでにプロとして多忙を極めていたペギー葉山自身も、レコーディングでマイクの前に立った瞬間、校舎の木漏れ日やチャペルの鐘の音が脳裏に鮮烈に蘇り、胸を熱くしたと自著や回想録で語っています。2009年には青山学院創立135周年を記念し、青山キャンパスの正門近くに『学生時代』の記念歌碑が建立され、現在も学生や同窓生に親しまれています。