「ご縁がありますように」と5円玉を探す参拝者は今も多い。11円で「いい縁」、25円で「二重のご縁」。こうした語呂合わせは、長年日本人に親しまれてきた。しかし寺の台所事情に目を向けると、この風習が深刻な悲鳴へと変わっている。
引き金となったのは、金融機関による硬貨取扱手数料の改定だ。窓口やATMで大量の硬貨を預け入れる際、枚数に応じた手数料が差し引かれる。1円玉や5円玉を数百枚集めて銀行へ持ち込むと、集まった総額を手数料が上回り、結果として赤字になる「逆ザヤ現象」が各地で頻発した。信仰の証として集まった浄財が、銀行の手数料によって目減りしていく現実に、頭を抱える僧侶は少なくない。
こうした状況を背景に、現在の参拝者の間では100円玉や500円玉、あるいは千円札を納めるスタイルが定着しつつある。額面そのものの大小がご利益を左右するわけではないが、歴史的建造物の屋根を葺き替え、境内の木々を手入れするための維持費を考えれば、数百円から千円程度を目安とするのが現代の理にかなった相場感といえる。