日本において『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が国民的人気を得た背景には、卓越した日本語吹き替え声優陣の存在があります。特にドク役を務めた名声優たちの演技は、それぞれ独自の解釈と魅力に溢れています。
テレビ朝日『日曜洋画劇場』版などで広く親しまれ、日本のファンにとって“ドクの声”として深く心に刻まれているのが故・青野武さんです。甲高い叫び声、コミカルな早口、そして時折見せる包容力のある父親のようなトーンまで、ドクのマッドサイエンティスト感と愛嬌を完璧なバランスで演じ分けました。青野ドクの「ヘビーだぜ!」というセリフ回し(マーティの口癖に対するリアクションなど)は、吹き替え文化の最高峰として語り継がれています。
一方で、ソフト版や2000年代以降のテレビ放送版でドクを演じた山寺宏一さんの演技も見事です。青野さんが築き上げたエキセントリックなドク像に最大限のリスペクトを払いながらも、よりスピーディーで現代的なテンポ感を導入。コミカルな演技の端々に知性と哀愁を漂わせ、三部作を通じたドクの心理的変化を緻密に表現しました。
他にも、ソフト初期版の穂積隆信さんや、フジテレビ版でマーティ役の織田裕二さんと共演した三宅裕司さんなど、バージョンごとに異なる個性が楽しめるのも本作の吹き替え版の醍醐味です。