斉藤純の名を一躍全国に知らしめた金字塔が、1994年に発表された短編小説『ル・ジタン』です。本作は第47回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)を受賞し、選考会でもその圧倒的なスピード感と緻密なプロットが高く評価されました。
『ル・ジタン』の主人公は、卓越したライディングテクニックを持つ孤高のバイク乗り。深夜の峠やハイウェイを舞台に繰り広げられる心理戦とサスペンスは、オートバイのメカニズムや走行フィーリングを知り尽くした斉藤氏だからこそ描けた名シーンの連続です。
バイク小説はともすればマニアックな世界に閉じこもりがちですが、斉藤作品は人間の孤独や葛藤、疾走の果てに見える儚さを普遍的なドラマへと昇華させました。当時を知るミステリー愛好家からは「国産モーターサイクル・ハードボイルドの到達点」と評され、今なお名作アンソロジー等で読み継がれています。