彼女の足跡を振り返る際、避けて通れないのが「女三四郎」という異名だ。まだ女子柔道が公式競技として十分に認知されていなかった時代、13歳で第1回全日本女子体重別選手権を制覇。小柄な体躯から繰り出す変幻自在の技で、瞬く間に列島を熱狂させた。1984年には世界選手権で日本人女子初となる金メダルを獲得し、公開競技として採用された1988年ソウルオリンピックでも銅メダルをもぎ取っている。
しかし、彼女が真に戦っていた相手は、畳の上の対戦相手だけではなかった。当時、男性中心だった武道界における根深い偏見、女子選手に対する冷遇、環境の不備。そうした理不尽と闘い続けた経験こそが、現在の鋭い舌鋒を育んだ原点と言える。現役引退後は筑波大学大学院で学びを深め、同大学の教授として教鞭を執りながら、学術的な見地からスポーツの在り方を問い直す作業を地道に続けてきた。