劇的なドラマとして語り継がれてきたこの場面ですが、歴史的事実として検証すると「ルイ14世自身は発言していない(後世の創作)」という見解が有力です。
第一の理由は、当日の高等法院の公的議事録に該当するセリフが一切記録されていない点です。記録に残されているのは、王が「これ以降、議会が王令の審議を妨害することを禁じる」という趣旨を厳格に通達した事実のみでした。当時の外交官の書簡や側近の日記にも、この刺激的なフレーズは登場しません。
決定打となったのは、18世紀の啓蒙思想家ヴォルテールが著した『ルイ14世の世紀』(1751年刊行)です。ルイ14世の死から数十年後、絶対王政の威光と君主の絶対性を象徴的に描写するためにエピソードがドラマチックに脚色され、世界中に広まったとされています。