時代を揺るがした加納典明の写真は何が特別だったのか。その本質は、被写体を綺麗に包装して見せる欺瞞を徹底的に排除し、人間の根源的な欲望や摩擦をそのままフィルムに焼き付けた点にあります。
当時のポートレートやグラビアは、均一なライティングで欠点を隠す手法が主流でした。それに対し加納は、極端なコントラスト、荒々しい粒状感、あえて被写体へ挑発的に踏み込むノーファインダー撮影などを駆使しました。被写体となった人物が普段隠している防衛本能を揺さぶり、剥き出しの感情を引きずり出すアプローチは、観る者に強烈な生理的ショックを与えたのです。
単なるエロティシズムの枠にとどまらず、都市の混沌やアングラ演劇、ストリートの狂気を写し取ったその芸術性は、時代に対する鋭利な批評そのものでした。