南三陸さんさん商店街を訪れてまず目を奪われるのが、周囲の山並みと青空に美しく溶け込む平屋建ての木造建築群です。基本設計およびデザイン監修を担当したのは、新国立競技場などを手掛けた世界的建築家・隈研吾氏です。
隈氏が設計において一貫してこだわったのは、地元宮城の豊かな資源である「南三陸杉」の徹底活用でした。施設全体にふんだんに使われた杉材は、年月を経て味わい深いシルバーグレーへと変化しつつあり、木の香りと温もりで訪れる人々を包み込みます。店舗棟を単一の巨大建造物にせず、6つの棟に分割して配置した「分棟形式」を採用することで、かつての志津川の商店街にあったような路地裏の回遊性とヒューマンスケールを再現しました。
深い軒(のき)の下に広がる木張りのデッキテラスは、雨風を遮るだけでなく、店舗と通路の境界を曖昧にし、人と人との交流を自然に生み出す仕掛けとなっています。さらに、商店街のすぐ横を流れる八幡川を跨ぎ、「南三陸町震災復興祈念公園」へと渡る木造歩道橋「中橋(なかばし)」も隈研吾氏の設計です。上下2層構造の美しいアーチ橋が商店街と祈念公園を結び、祈りと再生の動線を見事に一本のストーリーとしてまとめ上げています。