一般社団法人シルバーサービス振興会が公表するデータを紐解くと、介護技能実習評価試験の合格率と難易度は一見するとそれほど高く見えないかもしれません。初級の実技試験における合格率は90%前後、専門級でも実技は80%台後半で推移しており、国家資格である介護福祉士試験などと比較すれば数字上のハードルは低く映ります。しかし、この高合格率という統計の裏には、現場指導員が連日マンツーマンで特訓を重ねた結果という実態が隠されています。
現場を長年取材する中で浮き彫りになる、介護技能実習評価試験に受からない決定的な理由は主に2点に集約されます。第1は「日常会話と試験特有の専門日本語とのギャップ」です。利用者の普段の会話には難なく応じられても、学科試験で出題される「側屈」「体校」「臥位」といった専門用語や、「〜してはならない」「必ずしも〜とは限らない」といった日本語の否定表現・限定表現で引っかかり、学科試験を落とすケースが頻発しています。
第2の要因は、実技における「慣れから生じる自己流介助と安全配慮の欠落」です。実習開始から半年〜2年が経過すると、実習生は施設の日常業務にすっかり馴染みます。その結果、試験現場で求められる「作業前の声掛け」「車いすのブレーキ・フットサポートの確認」「ベッド柵の確実な復旧」といった基本手順を、無意識に省略してしまうのです。試験官は日頃の作業スピードではなく、「利用者の尊厳と安全が守られているか」を減点方式で厳密にチェックするため、わずかな確認漏れが命取りとなります。