野田佳彦という政治家を語る上で欠かせないのが、聞く者の心を揺さぶる圧倒的な演説力です。その原点となったのが、落選中も含めて毎朝のように立ち続けた千葉県内の駅頭での「辻立ち(朝立ち)」でした。通算数千日におよぶ街頭演説では、マイクを握るだけでなく、通勤・通学で行き交う人々の表情を観察し、「どうすれば飾らない言葉が一般庶民の心に届くのか」を徹底的に磨き上げました。
その演説力が日本中を驚かせた象徴的な出来事が、2011年の民主党代表選における「どじょう演説」です。当時、自身の地味な風貌や知名度の低さを自虐的に捉えつつ、相田みつをの詩を引用して放ったフレーズは語り草となっています。
「どじょうが金魚のまねをしてもしょうがない。泥臭く、国民のために汗を流す政治をやりたい」――この率直で飾り気のないメッセージは、派手な人気取り合戦に飽き飽きしていた国民と議員の心を一気に掴み、逆転勝利で首相の座を手繰り寄せる決定打となりました。野田氏の言葉には、原稿をただ読み上げる政治家にはない「血の通った説得力」が宿っています。