本編で言っていないセリフが、なぜここまで社会現象として定着したのでしょうか。その発端は、1980年代から2000年代にかけて隆盛を極めたバラエティ番組やものまね番組にあります。
当時、多くのタレントやお笑い芸人が『サザエさん』のパロディを披露する中で、マスオさんの温厚で気弱な性格を視覚的・聴覚的にわかりやすく誇張する手法として、「裏返った甲高い声」が重宝されました。「驚き慌てる婿養子」というキャラクター性を一瞬で観客に伝えるための記号として、声のトーンを極端に上げた「えぇー!」が発明されたのです。
さらに2000年代以降、ネット掲示板や動画共有プラットフォームの台頭がこのイメージを加速させました。ネット上では「びゃあ゛ぁ゛ぁ゛」といった独特のオノマトペでマスオさんの驚き声がテキスト化され、アスキーアートや動画MAD素材として爆発的に拡散。テレビのデフォルメ芸とネットのミーム文化が共鳴した結果、「本編を毎週観ているわけではない層」はもちろん、毎週観ている視聴者の記憶すらも「昔からそう言っていたはずだ」と上書きされていきました。