かつて「誰もが自由に乗降できる開かれた高速鉄道」だった新幹線は、あの事件を契機にその姿を大きく変えた。現在、東海道新幹線をはじめとする主要路線では、客室やデッキへの防犯カメラ増設が完了し、AIによる不審挙動の検知システムの実証実験も進んでいる。警備員の巡回頻度は劇的に増え、車掌が盾や防刃ベストを装備することも日常の光景となった。
しかし、航空機のような厳格な手荷物検査の導入は見送られ続けている。利便性と安全性のジレンマ。1日に数十万人が利用する日本の大動脈において、改札口での手荷物検査は現実的ではないという判断だ。その代わりに導入されたのが、乗客の「自己防衛」を支援するソフト面の対策である。特急車の座席シートを取り外して盾として使う訓練や、非常通報ボタンの視認性向上など、万が一の事態に備えた具体策が現場レベルで定着している。