本作において、読者が最も「居心地の悪さ」を覚えるのが、主人公・桐山零と義姉・幸田香子の関係性だろう。血の繋がらない姉弟。しかし、そこにあるのは美しいロマンスではない。互いの傷口を抉り合いながら執着する、極めて泥沼に近い共依存だ。
香子は零に対して、激しい憎悪と甘えを同時にぶつける。零の部屋に勝手に入り込み、ベッドに潜り込むその姿には、どこか性的でありながらも、幼子の駄々のような不気味さが同居する。さらに、既婚者であるプロ棋士・後藤との不倫関係も相まって、彼女の存在そのものが生々しい生理的嫌悪感を呼び起こす。このドロドロとした愛憎劇が、爽やかな将棋漫画を期待した読者に冷や水を浴びせるのだ。