身体的な特徴だけではない。性格や特定の精神的傾向、さらにはストレス耐性までもが隔世遺伝するのではないかという仮説が、いま世界中の研究者を引きつけている。マウスを用いた実験では、特定の恐怖体験を与えられた個体の子や孫が、その体験を直接経験していないにもかかわらず、同じ刺激に対して強い恐怖反応を示すことが実証された。
これは、祖先が生き延びるために獲得した環境への適応戦略が、精子や卵子を通じて次世代へ、そしてその次の世代へと受け継がれていることを意味する。私たちが日常で感じる原因不明の不安や、特定の事物への強いこだわりは、もしかすると数代前の祖先が生き抜くために刻み込んだ「警告の記憶」なのかもしれない。