快刀乱麻の意味は、非常にもつれて収拾がつかなくなった物事や複雑なトラブルを、卓越した判断力や巧みな手際で鮮やかに処理・解決することです。「快刀」は切れ味の鋭い名刀を指し、「乱麻」は複雑に絡み合った麻の糸を指します。一般的には「快刀乱麻を断つ(かいとうらんまをたつ)」という慣用句の形で広く浸透しています。
この言葉の由来となった故事は、中国の南北朝時代を記録した歴史書『北斉書 文宣帝紀』に遡ります。東魏の権力者であった高歓(こうかん)が、息子たちの知恵と将来の器量を見極めるため、それぞれに激しくもつれた一束の麻糸を与え、「これを綺麗に解いてみよ」と命じました。
兄や弟たちが指先で一本ずつ懸命に糸をほぐそうと悪戦苦闘する中、次男の高洋(こうよう・後の北斉の初代皇帝、文宣帝)だけは冷静に腰の刀を抜き、「乱れる者は斬るべし(乱れた糸は断ち切るしかない)」と言い放って一刀のもとに麻糸を切り捨てました。従来の枠組みに囚われない非凡な決断力と発想の転換に、父の高歓は大いに感嘆したと伝えられています。
興味深いことに、古代ギリシャ・マケドニアのアレクサンドロス大王が、誰も解けなかった複雑な結び目を剣で両断してアジアの覇者となった伝説「ゴルディオンの結び目(Gordian Knot)」と構造が完全に一致しています。東洋と西洋の双方が、膠着した難局を打開する知恵として「既存の常識を覆す大胆な一撃」を高く評価してきた歴史がうかがえます。