「稚魚であるもじゃこは食用になるのか?」という疑問を持つ人は少なくありません。結論から言えば、生物学的には食用可能であり、産地の一部では昔から郷土の味として親しまれてきた歴史があります。
かつてモジャコ漁が盛んな九州や四国の沿岸部では、採捕の過程で弱ってしまい種苗として生簀に入れられなくなった個体を、漁師たちが自宅で調理して食す習慣がありました。
【伝統的な食べ方:もじゃこの唐揚げ・南蛮漬け】
- 唐揚げ:軽く水洗いして内臓を除き、塩コショウと片栗粉をまぶして高温の油でカラリと揚げる。骨が柔らかいため頭から丸ごと食べられ、青魚特有の芳醇な旨味とほのかな苦味が凝縮された絶品とされる。
- 南蛮漬け:素揚げしたもじゃこを、酢・醤油・みりん・唐辛子・刻み玉ねぎを合わせた調味液に漬け込む。日持ちがし、小魚のコクが際立つ保存食。
- 佃煮:甘辛い醤油ダレでじっくり煮詰め、白米の供として食す。
しかし、こうした料理が一般の鮮魚店やスーパーに並ぶことは現代ではまずありません。理由は極めて明快で、経済価値の差にあります。1尾を食用として数十円で売るよりも、生かして養殖業者に引き渡し、数キロのブリに育て上げたほうが数百倍の経済価値を生み出すためです。市場原理と資源保護の両面から、もじゃこをそのまま食べる文化は「産地のごく限られた関係者だけが知る幻の味」となっています。