back numberの楽曲群の中でも、女性目線の歌詞考察において最高峰の完成度を誇ると評されるのが『幸せ』です。主人公の女性は、想いを寄せる男性の最も身近な相談相手というポジションに身を置いています。男性が嬉しそうに別の好きな人の話をする姿を目の前で見つめながら、笑顔で相槌を打つ痛烈な描写から物語は展開します。
本作における主人公の心境を決定づけているのは、「告白して関係が壊れることへの恐怖」と「彼の幸せを一番近くで見届けることへの執着」という二重の葛藤です。「本当はずっと前から わかってたの」というフレーズが示す通り、彼女は最初から勝ち目のない片思いであることを自覚しています。それでも彼の隣に居続けるために選んだ役割が、「一番の理解者として彼の恋を応援する友人」でした。
楽曲のクライマックスで歌われる「最初から あなたの幸せしか願っていないから」という言葉は、額面通りの純粋な祝福であると同時に、自らの恋心を完全に殺すための残酷な自己暗示でもあります。ラストシーンで彼女は、誰にも見られない暗い部屋の中で一人涙を流します。自分の想いは永遠に届かなくていい、彼が笑っていられるならそれでいいと言い聞かせる結末は、聴き手の胸を強く締め付けます。