ブームが沈静化し、サンリオ社内でも「キティは終わった」と囁かれていた1980年、社内コンペを経て3代目デザイナーに抜擢されたのが山口裕子(やまぐち ゆうこ)氏でした。高知女子大学(現・高知県立大学)卒業後に入社した山口氏は、就任直後から前代未聞の現場主義を貫きます。
最も象徴的な取り組みが、全国のサンリオショップを行脚してスタートさせたデザイナーサイン会です。ファン一人ひとりの目を見てイラストを描きながら、「どんなグッズが欲しい?」「どんな服を着てほしい?」と生の声を集めました。山口氏がこれまでに開催したサイン会は国内外で通算1,000回以上に達し、キャラクタービジネスにおける「顧客共創モデル」の先駆けとなりました。
山口氏が敢行した改革は、当時のサンリオ社内における「絶対的タブー」を次々と打ち破るものでした。
- 輪郭線(黒いアウトライン)の撤廃:パステルカラーやモノトーン、油彩画調など、大人の女性も持てるアート表現を開拓。
- ピンクキティの誕生:従来のトレードカラーだった赤・青・黄色の三原色から脱却し、1980年代後半の女子中高生トレンドを取り入れたピンクを採用して爆発的ヒットを記録。
- 異業種・ハイブランドとのコラボレーション:レディー・ガガをはじめとする海外セレブの着用や、ハイブランドとの協業を牽引。
女子高生ブームやカワイイ文化の世界的拡散とシンクロし、キティを「子供向け文房具の絵柄」から「世界的ポップカルチャーの象徴」へと押し上げた主役こそ、山口氏の現場感覚と柔軟な決断力でした。