死闘はPK戦という最も残酷な決着方法へ持ち込まれた。ここで異彩を放ったのが、アルゼンチンの守護神エミリアーノ・マルティネスだ。彼はキッカーに対してボールを意図的に遠くへ放り投げるなど、徹底した心理戦を展開した。プレッシャーに晒されたフランスのキッカーたちの心を揺さぶり、枠を外させ、自らはボールの軌道を完璧に読み切ってセーブを見せた。
フランス陣営の誤算は、交代枠の早期消費によるキッカーの若返りとメンタル面の影響だった。土壇場での追いつき劇で勢いに乗っていたはずのフランスだったが、PK戦直前の精神状態は極限の緊張状態に達していた。ピッチ上の「空気」をコントロールしたマルティネスの狡猾さと勝負強さが、最後の最後でアルゼンチンにトロフィーをもたらしたのだ。