吉田篤弘の文学を語るうえで欠かせないのが、著者の多彩な吉田篤弘の経歴と、妻である吉田浩美氏とともに主宰するデザインユニット「クラフト・エヴィング・ストヂオ」の存在です。
1962年東京生まれの吉田篤弘は、書籍の装幀(ブックデザイン)を手がけるデザイナーとしてキャリアを築き、講談社出版文化賞ブックデザイン賞を受賞するなどデザイン界で高い評価を獲得しました。架空の事物をあたかも実在するかのように提示するクラフト・エヴィング・ストヂオ名義の著作(『クラウド・コレクター』『どこかにいってしまったものたち』など)を経て、吉田篤弘単独名義での小説執筆を本格化させました。
「本は中身の文章だけでなく、紙の手触り、文字のフォント、余白の美しさまで含めてひとつの表現である」という哲学は、彼のすべての著作に貫かれています。本棚に置いておくだけで生活が少し豊かになるような佇まいは、職人気質のものづくり精神から生まれています。