二代目尾上右近の経歴を語る上で欠かせないのが、歌舞伎役者と清元節の太夫という前代未聞の「二刀流」としての挑戦です。
江戸の昔から歌舞伎と清元は密接に結びついていましたが、現代において一人の人間が役者として舞台に立ちつつ、宗家の演奏家として第一線で声を張ることは極めて異例の決断でした。右近は2018年2月に七代目清元栄寿太夫を襲名。周囲からは両立の困難さを懸念する声もありましたが、本人は「歌舞伎も清元もどちらも自分にとって不可欠な表現」として覚悟を決めました。
この挑戦は大成功を収め、清元で培った強靭な発声や豊かな音感は、歌舞伎の台詞術や古典の身体表現に驚くべき深みをもたらしています。自らのルーツを力に変えたこの生き様こそ、右近が唯一無二と呼ばれる所以です。