淡島千景さんの名前を語る上で欠かせないのが、名優・森繁久彌(もりしげ ひさや)さんの存在です。1955年の名作映画『夫婦善哉』(豊田四郎監督)において、森繁さん演じるぐうたらな求馬(柳吉)を甲斐甲斐しく支える芸者・蝶子役を演じ、ブルーリボン賞主演女優賞を受賞。以降、東宝の『駅前シリーズ』などで長年にわたり息の合った夫婦役・パートナー役を演じ続けました。
あまりにも息の合った掛け合いから、世間では「私生活でも二人は付き合っているのではないか」「実は深い関係にあるのでは」といった熱愛の噂が絶えませんでした。しかし、実際の二人は恋愛を超越した絶対的な信頼で結ばれた「戦友」でした。
森繁さんは淡島さんの確かな演技力と凛とした佇まいを深くリスペクトしており、アドリブの多い森繁さんの芝居を完璧に受け止めて打ち返せる唯一無二の女優として信頼を寄せていました。淡島さん自身も森繁さんを尊敬しつつ、男女の甘い関係に流されることなく、お互いを高め合うプロフェッショナルな距離感を生涯崩しませんでした。歴代彼氏の噂としては、映画監督や共演俳優の名前が取り沙汰されたこともありましたが、決定的なスキャンダルに発展することは一切なく、私生活の品格を徹底して守り抜きました。