昭和の成人漫画に対しては、「単に規制が緩かったから過激なものが描けた時代」という短絡的な見方をされることがあります。しかし、これは明確な誤解です。
実際には前述の通り、刑法175条による摘発リスクは常に付きまとっており、編集長や作家が警察に呼び出される日常でした。規制が緩かったのではなく、「規制の網をかいくぐるための知恵比べと創作への情熱が極限まで研ぎ澄まされていた」というのが正確な歴史的事実です。
また、「昭和の成人漫画はすべて劇画調か美少女かの二者択一だった」という認識も不十分です。実際にはSF、ナンセンスギャグ、ハードボイルド、怪談、純文学的私小説など、ありとあらゆる実験的ジャンルが貪欲に飲み込まれていました。当時の青年作家にとって、成人誌は商業誌でボツになった前衛的な企画を形にできる「最後の砦」だったのです。