現場の鑑識作業を担当した科学捜査研究所の元職員が残したメモには、当時の公式見解に対する強い疑問が記されていた。遺体の創傷状態から推測される犯行時刻と、近隣の防犯カメラに映った不審人物の移動タイミングがどうしても一致しないのだ。
執拗に行われた司法解剖の結果によれば、被害者の死因となった打撲痕は特殊な形状の凶器によるものであり、当時容疑者として名前が挙がっていた人物の所持品からは該当する器具が見つかっていない。現場に散乱していた微小繊維の分析結果も、初期捜査の段階でどこかへ追いやられていた。科学的な裏付けを無視した強引な捜査立て直しが、真相究明を著しく遅らせた事実は免れない。