勝利へのカウントダウンが始まり、スタンドの誰もが試合終了を予感したその瞬間、グラウンドには異様な熱気が立ち込めた。2点ビハインドで迎えた9回裏、2死走者なし。打席に入ったのは、今大会で一躍脚光を浴びることとなった2年生の代打だった。
追い込まれながらも粘りに粘り、11球目の外角低めスライダーを泥臭くショートの頭上へ弾き返す。この一打が、止まりかけていたチームのエンジンに再び火をつけた。続く主砲が左中間を破るタイムリー二塁打を放つと、甲子園のスタンド全体が波打つような地鳴りの応援に包まれる。相手投手のわずかな動揺を見逃さず、暴投と内野安打が重なって一気に同点。最後は押し出し四球という、あまりにも劇的で残酷な幕切れとなった。
マウンド上で膝をつき、土を掴みしめた敗者の姿と、歓喜の輪を作る勝者のコントラスト。これこそが、高校野球という一発勝負の舞台が持つ残酷さであり、同時に人々を魅了して止まない魔力そのものである。