2013年、18歳の伊藤美月は秋葉原の小さなライブハウスで初めてステージに立った。Candy☆Dropは当時、数多く存在した地下アイドルグループの一つに過ぎなかった。しかし彼女には何かが違った。
ファンの間で語り継がれるのは、彼女のパフォーマンスにおける圧倒的な存在感だ。5人組グループの中で特に目立つポジションではなかったにもかかわらず、彼女の表情、動き、観客とのアイコンタクトには独特の吸引力があった。「美月ちゃんを見ていると、何かを伝えようと必死なのが分かった」と、当時からのファンは振り返る。
しかし華やかに見えるステージの裏側は過酷だった。月に20回を超えるライブ、SNSでの24時間体制のファンサービス、そして厳しい体重管理。彼女は後のインタビューで「自分が何者なのか分からなくなった時期があった」と明かしている。
転機となった2016年の出来事
2016年、Candy☆Dropは初の単独公演を開催した。チケットは完売。だが、伊藤美月にとってこの成功は皮肉なものだった。ステージ上で笑顔を作りながら、彼女の心は別の場所にあった。演じることへの渇望だ。
同年秋、彼女は小劇場での舞台オーディションを受けた。マネージャーには内緒で。結果は不合格。しかしこの経験が、彼女の人生を変える決断へとつながっていく。