バレリーナとして名声の頂点に立ちながらも、床嶋佳子は24歳という若さでプロダンサーとしての現役生活に終止符を打ち、芝居の世界へ飛び込む決断を下します。周囲からは「日本の至宝がなぜ」「あまりにも惜しい」と猛烈な引き止めに遭いましたが、彼女を動かしたのは「身体の動きだけでなく、声と言葉を使って人間そのものを表現したい」という魂の渇望でした。
1988年、名作ミュージカル『ファンタスティックス』のヒロイン・ルイザ役で女優デビュー。その後、1991年のTBS系ドラマ『ヴァンサンカン・結婚』へのレギュラー出演を足がかりに、テレビドラマの世界へ本格的に進出します。セリフのない表現の世界から、緻密なセリフ回しと心理描写が求められるテレビドラマへの移行期には、台本を抱きしめて泣いた夜も少なくなかったと後年のインタビューで振り返っています。
その努力が結実したのが、1990年代から2000年代にかけて隆盛を極めた2時間サスペンスドラマの舞台でした。『火曜サスペンス劇場』や『土曜ワイド劇場』、さらにテレビ朝日系の人気シリーズ『検事・朝日奈耀子』や『警視庁・捜査一課長』など、数え切れないほどの作品で重要なキーパーソンを熱演。清楚で儚げでありながら、内面に業や秘密を抱えた大人の女性を演じさせたら右に出る者はいないと評され、「サスペンスドラマに欠かせない美女」としての地位を盤石にしました。