名古屋駅地下街エスカのエビフライ名店を巡る際、訪問者の多くが頭を悩ませるのが「まるは食堂」系列と「海老どて食堂」のどちらを選ぶべきかという問題です。実際に両店の厨房オペレーションや仕立てを丹念に取材・検証すると、目指している食体験のベクトルが根本から異なることが分かります。
知多半島・南知多町豊浜の網元が原点である「まるは食堂」の真骨頂は、素材の力強さにあります。多くの揚げ物が衣の厚みでボリューム感を演出する中、同店のフライは衣が薄く、中身の海老が極太で端から端まで身が詰まっています。箸で持ち上げたときのずっしりとした重量感、そしてひと噛みした瞬間に弾け飛ぶようなプリッとした筋繊維の反発力は、海鮮食堂としての矜持そのものです。添えられる自家製タルタルソースも酸味が抑えめで、主役である海老の淡泊な甘みを引き立てる設計になっています。「魚介料理としての完成度」を求めるならば、同店が最良の選択肢となります。
一方、新幹線地下街エスカでひときわ目を引く「海老どて食堂」は、名古屋めしの持つエンターテインメント性を極限まで突き詰めた店舗です。看板メニューの35cm特大エビフライは、席に運ばれてきた瞬間に歓声が上がるほどの威容を誇ります。あまりの大きさに箸だけでは支えきれず、特製ハサミで一口大にカットしながら食べ進めるスタイルです。さらに決定的な違いは味付けにあります。卓上で温められる秘伝の「どて味噌だれ」と、すり鉢で自ら卵を崩して仕上げるタルタルソースを合わせることで、濃厚かつパンチのある味わいが口内に広がります。旅の記念となる強い刺激や体験価値を重視する層から絶大な支持を集めています。