ネットの掲示板やSNSでは、「専用のシートクッションを買わなくても、リビング用のニトリの座布団やチェアパッドで代用できる」という情報が散見されます。しかし、自動車のステアリングを預かる立場として、この「家庭用クッションの安易な車載代用」には重大な安全上の盲点が存在することを強調しなければなりません。
最大の懸念は、横滑りによる運転操作の妨げです。家庭用座布団の多くは、フローリングや木製チェアの上で人間が静止して使うことを前提としています。一方、走行中の車内には前後左右の強烈なG(加速度)が加わり続けます。裏面に特殊なシリコーン加工等の滑り止めが施されていない座布団をコーナリング時に使用すると、お尻がシートごとミリ単位でスライドしてしまいます。その結果、ブレーキングやステアリングの修正舵が遅れ、最悪の場合は事故の要因になりかねません。
さらに見逃せないのが、「シートと身体の密着感」の喪失です。適切なドライビングポジションでは、緊急時にブレーキペダルを床まで踏み込めるよう、腰がシートバックの最深部にしっかりと固定されていることが求められます。厚手すぎるリビング用座布団を挟むと、かかとが浮いてペダルタッチの繊細さが失われ、ペダルの踏み間違いや制動遅れを誘発します。「車用」として専用設計されたモデル、あるいはズレ止めストッパーをシートの隙間に挿し込めるタイプの製品を選択することは、快適さ以前の絶対的な安全基準なのです。