SNSや大手コミュニティサイトを調査すると、「仕事で高層オフィスの窓際会議室に行くだけで呼吸が苦しくなる」「家族旅行で訪れた吊り橋を渡れず、一人だけ取り残されて情けなかった」といった切実な悩みが数多く寄せられています。厚生労働省の患者調査や精神医学の疫学統計によると、特定の対象に強い恐怖を抱く「限局性恐怖症」の生涯有病率は約3〜5%に達し、その中でも高所に対する恐怖は動物恐怖と並んで極めて高い割合を占めています。
現場のカウンセリングでは、「昔、スキーのリフトで長時間停止したときの記憶が忘れられない」「ビルの階段を踏み外しかけて以来、手すりがないと歩けなくなった」というように、過去のトラウマ体験を契機に発症したケースが目立ちます。さらに、単なる高所への苦手意識にとどまらず、急激な息苦しさや死の恐怖を覚えるパニック障害を併発しているケースも少なくありません。
恐怖症の発症には、遺伝的に不安を感じやすい気質(神経症傾向)に加え、環境要因や心理的ショックが複合的に絡み合っています。決して個人の意志の弱さや甘えではなく、脳の防衛回路が誤作動を起こしている状態であるという客観的な理解が不可欠です。