インターネット上の受験英語解説などで長年議論の的となっているのが、It's me It is I 違いです。
伝統的な規範文法(Prescriptive grammar)では、be動詞の補語には主格(I)を置くべきとされており、「It is I.」が唯一の正解と教えられていた時代がありました。しかし現代の実生活において「It is I.」を使うと、ビクトリア朝の執事や大河ドラマの登場人物のような時代錯誤で大仰な響きを持たれてしまいます。現代英語(Descriptive grammar)では、カジュアルからセミフォーマルに至るまで「It's me.」が完全にデファクトスタンダードとして定着しています。
また、関係代名詞を用いた強調構文であるIt's me who 使い方にも、ネイティブの間でさえ文法的な揺らぎがあります。
例文A(伝統文法に厳格な形式):It is I who am responsible.(責任があるのは私です)
例文B(現代口語で最も一般的な形式):It's me who is responsible.(責任があるのは僕なんだ)
日常会話やカジュアルな執筆では例文Bが好まれますが、学術論文や格調高い公文書では「I am the one who is responsible.」と言い換えるのが最も安全な回避策です。
さらに近年では、It's me スラングとしての文脈も広がっています。SNSミームでは、自分のドジな写真や自虐的な投稿に一言「Literally me(これ完全に私だ)」と添える感覚で使われたり、米国のポップアイコンであるテイラー・スウィフトが世界的ヒット曲『Anti-Hero』で歌った「It's me, hi, I'm the problem, it's me(私よ、そう、問題児は私)」のフレーズが、自分の欠点をあっけらかんと認めるネットスラングとして広く浸透しました。
【プロの結論】心理的バウンダリーと対人距離から見出すべき使い分けの基準
言語の運用は対人関係における「心理的バウンダリー(境界線)」の調整そのものです。「It's me」が成立するのは、双方の間に「自己を開示し合える安全な関係」がすでに築かれている領域に限られます。コミュニケーションの失敗を未然に防ぐため、以下の判断基準を指標としてください。
【使って自然な人・状況】
- 家族、パートナー、ルームメイトのドアをノックする時
- メッセージで連絡を取り合い、直後に通話ボタンを押した親友への第一声
- 社内Slack等のチャットツールで、自分の顔写真とユーザー名が表示されている状況下での「It's me again!(また私ですみません!)」という前置き
【避けるべき人・状況】
- 取引先、顧客、社外パートナーへの通話および電子メール
- 前回の会話から半年以上ブランクがある知人への連絡
- 採用面接のオンライン会議入室時(入室時は「Good afternoon, this is [Full Name]. Thank you for your time.」が鉄則)