『セプテンバーさん』の歌詞を読み解く上で最大の鍵となるのが、「夏ってやつ」という独特の擬人化表現です。楽曲中において、夏は無邪気で、身勝手で、圧倒的な熱量を持って僕たちを振り回した存在として描かれます。
歌詞冒頭から展開される「セプテンバー」への呼びかけと、夏の記憶の回想には、日本語のひらがな表記や柔らかなふりがな遣いが多用されています。これにより、硬質な文学表現とは一線を画す、等身大で人肌の温もりを感じさせる叙情性が宿っています。
「僕が咲かせた花火」と「君の胸で揺れる火」の対比に見られるように、野田洋次郎が紡ぐ言葉は常に「客観的な情景」と「内面的な感情の揺らぎ」をシームレスに行き来します。夏祭りや花火大会といった誰もが共有する夏の記号を散りばめつつ、それらが過ぎ去った後に残る圧倒的な孤独感と、それでも前を向いて歩き出そうとする微かな希望が、美しいコントラストを生み出しているのです。