洋式化が急速に進む一方で、人間工学や医学の観点からは和式便所が持つ健康効果が見直される場面もあります。洋式便座に腰掛ける姿勢(約90度)に比べ、和式のように深くしゃがむ姿勢(約35度)は、直腸と肛門をまっすぐに保つ「直腸肛門角」を広げる効果があります。
この姿勢は骨盤底筋群を弛緩させ、過度ないきみを使わずに自然な排便を促すため、便秘予防や痔の負担軽減に適しているとされています。現在、洋式トイレで足元に置く排便用ステップ台が人気を集めているのも、和式の理想的な前傾姿勢を再現するための工夫にほかなりません。さらに、日常的にしゃがむ動作を行うこと自体が、足腰や股関節の柔軟性を保つトレーニングにもなっていました。
もう一つの決定的な強みが災害時における圧倒的な復旧力と衛生性です。停電時でも電気系統のトラブルに左右されず、断水時にも少量のバケツ水で確実に流しきることができます。避難所などで不特定多数が利用する際、便座に直接肌を接触させる必要がないため、接触感染リスクを物理的に回避できる点も防災専門家から高く評価されています。