香典袋(不祝儀袋)の中袋に金額を記載する際、最も格式の高い正書法とされるのは旧字体の大字を用いた「金 伍仟圓」という表記です。大字とは、漢数字の「一、二、三、五、十」などが容易に書き換えられて改ざんされるのを防ぐため、古くから公文書や証書で用いられてきた文字体系を指します。「五」を「伍」、「千」を「仟(または阡)」、「円」を「圓」と書くのは、金額の改ざんを防ぐという防犯上の知恵が儀礼文化として定着した結果です。
多くのマナー指南書では「大字で書くのが鉄則」と解説されますが、葬儀の現場実務や調査報道の視点から見ると、現在では一般的な漢数字である「金五千円」と記載しても失礼にはあたりません。大手葬祭チェーンの担当者やマナー研究家への取材によると、現代の通夜・告別式で受付に持ち込まれる香典のうち、約45〜50%が一般的な漢数字で記されており、遺族側がそれを無礼と受け取るケースは皆無に等しいのが実情です。
金額の末尾につける「也(なり)」については、「金伍仟圓也」のように書いても「金伍仟圓」で留めても、どちらも間違いではありません。本来「也」は「これ以下の端数はない」という証明として銭(せん)単位が存在した時代に使われた名残です。現代の香典においては、五千円や一万円といった端数のない金額の場合、「也」は付けても付けなくてもマナー上の優劣はないと整理されています。