2017年5月18日、松竹および中村獅童の所属事務所から発表された直筆のファクスは、歌舞伎界のみならず日本中に大きな衝撃を与えました。書面に記されていた病名は「初期の肺腺がん」。世間が最も注視した中村獅童の肺がんステージは、臨床病期において最も軽微な分類に位置するステージ1Aでした。
肺がんは大きく「小細胞肺がん」と「非小細胞肺がん」に大別され、日本人における肺がんの大半を占めるのが非小細胞肺がんの一種である「肺腺がん」です。気管支の末梢、すなわち肺の奥深くに発生しやすい性質を持ち、初期段階では咳や痰、胸痛といった自覚症状がほとんど現れません。進行して初めて血痰や呼吸困難が現れるケースが多く、発見時にはすでにステージ3や4に達している事例も少なくない難治性がんです。
日本肺癌学会のガイドラインや病期分類(TNM分類)に照らし合わせると、ステージ1Aとは「がんの最大径が3センチ以下(細分類では1センチ以下から段階別)で、局所リンパ節転移がなく、遠隔転移も認められない状態」を指します。当時、担当医から「このサイズで見つかったのは奇跡に近い」と告げられた通り、肉眼で異変を感じ取ることのできない、わずか数センチ未満の病変でした。極めて早い段階で病魔を捉えられたことが、後の完全復帰を決定づける第一関門となったのです。