オカルトファンならずとも一度は見聞きしたことがある「ロシア睡眠実験(Russian Sleep Experiment)」。この怪談がいつ、どこで生まれたのか、その起源は完全に特定されています。
発祥となったのは2010年8月、海外の都市伝説共有サイト「Creepypasta Wiki」に投稿された短編ホラー小説です。執筆者は「OrangeSoda」というハンドルネームのユーザーであり、物語のプロットは以下のようなものでした。
1940年代後半、旧ソ連の研究者が5名の政治犯を密閉された実験室に閉じ込め、実験的な興奮ガスを注入して15日間不眠状態に置く実験を開始。日を追うごとに被験者たちは精神を崩壊させ、最終的には内臓を露出させながら互いを傷つけ合い、悪魔のような狂気に憑りつかれていく――というプロットです。
この物語が瞬く間に世界中へ拡散した最大の要因は、「被験者のなれの果て」として出回った戦慄の白黒写真にありました。青白く干からびた皮膚に剥き出しの歯、異様に開いた目を持つ怪物の画像は多くの読者にトラウマを植え付けました。しかし、この画像の正体は歴史的写真ではなく、アメリカのホラーグッズメーカー「Morbid Enterprises」が販売していた「Spazm」というハロウィン用の動く等身大パペットを撮影・加工したものです。
現在でもネット掲示板やショート動画プラットフォームでは、この写真を使った「閲覧注意の歴史的真実」といった誤情報が散見されますが、創作怪談がバイラルメディアを通じて本物の記録のように誤認されていった典型例と言えます。