かつて馬刺しといえば、居酒屋で頼む特別な逸品か、現地旅行の贅沢というイメージが強かった。ところがここ数年、真空急速冷凍技術と産地直送ネットワークの進化により、極上の馬刺しが注文から最短翌日には家庭の食卓へ届く時代となった。
そこで浮上したのが「タレ問題」だ。馬肉は牛や豚に比べて脂の融点が低く、あっさりとした高タンパク・低カロリーな肉質を持つ。そのため、既製品の万人受けするタレでは、肉の微細な甘みや鉄分の豊かな風味を消してしまうことがあるのだ。自分の好みやその日の部位に合わせてタレを仕込むことこそが、現代の食通たちが辿り着いた究極の贅沢である。